ANAのSFC見直しで、LITEはほぼ元のSFCに戻った
2026年9月29日、ANAは4月に発表したSFC制度改定を見直した。SFC LITE会員も、混雑時を除けばANAラウンジを使える。4月に「思ったほど改悪じゃない」と書いたヘビーユーザーとして、何が変わり、何が残ったのかを整理した。結論から言えば、見直しの中身は正しい。失ったのはラウンジではなく、ANAへの信頼だ。
2026年4月、私は「ANAのSFC改悪は、思ったほど改悪じゃない」という記事を書いた。SFCの本当の価値は優先搭乗とマイル積算ボーナスにあり、LITEになってもその二つは残る、という内容だ。ANAは6月に改定内容を見直すと表明し、9月29日に見直し後の制度を発表した。
結論から言えば、LITEは4月案よりずっとまともになった。 ただ、この5か月でANAが失ったものがある。会員からの信頼だ。
何が変わったのか
4月案と9月の見直し案を並べるとこうなる。
| 項目 | 4月案 | 9月の見直し |
|---|---|---|
| LITEの国内線ラウンジ | 利用不可 | 混雑時を除き利用可 |
| LITEの国際線ラウンジ | 利用不可 | 羽田・成田・ホノルルのANAラウンジは利用可 |
| 事前予約制 | なし | LITE向けに導入予定(PLUSは予約不要) |
| 決済額の基準 | 年300万円 | 年300万円(据え置き) |
| LITEのスターアライアンス資格 | シルバー | シルバー(据え置き) |
| 判定期間 | 2026年12月16日〜2027年12月15日 | 同じ |
| 開始時期 | 2028年4月 | 2028年4月1日 |
国内線ラウンジが使えないのは、年末年始やゴールデンウィーク、出発便が集中する時間帯だ。事前予約制の詳細は2027年度中に案内される(TRAICY)。名古屋/中部・大阪/関西・熊本・宮崎の共用ラウンジと、成田のANA ARRIVAL LOUNGEは、これまで通り使える。優先チェックイン、専用保安検査場、優先搭乗、手荷物優先受け取りも変わらない。
ANAは説明会で謝罪もした。混雑緩和を優先するあまり、長年の会員への配慮が足りなかった、という趣旨だ(Aviation Wire)。
300万円の基準は変わってない。ANAは200万円への引き下げも検討したという。しかし基準を下げればPLUS会員が増え、ラウンジはまた混む。そうなればLITE会員の入れる時間がかえって減る。それが見送りの理由だそうだ(J-CASTニュース)。
要するに、ANA便に乗る限り、LITEは「混雑時にラウンジに入れないかもしれないSFC」になった。 4月の「ラウンジ全面禁止」とは別物だ。
前回の記事の訂正
評価に入る前に、一つ訂正しておきたい。
4月の記事で私は「LITEで失うのは実質的にラウンジだけ」と書いたが、これはANA便に乗る場合の話で、正確ではなかった。スターアライアンス・ゴールドからシルバーに落ちると、提携他社便での優先チェックイン、優先搭乗、ラウンジ利用がなくなる。ユナイテッドやルフトハンザ、シンガポール航空で乗り継ぐ人にとって、これは小さな話ではないと思う。
今回の見直しでも、ここは変わらなかった。提携他社便の優先サービスが縮小することについて、ANA自身も「心苦しい」と述べている(J-CASTニュース)。
つまり、見直しの恩恵は人によって違う。ANA便中心の人にとっては、ほぼ元通りになった。提携他社便で海外を飛ぶ人にとっては、4月からほとんど何も変わっていない。
SNSの反応
発表後、X(旧Twitter)のタイムラインを一通り読んだ。4月ほどの怒りはない。目立ったのは、ANAの説明そのものに対する冷ややかな反応だった。大きく分けると四つある。
1. 「会員を増やしたのはANAだろう」
一番多かったのがこれだ。ANAは説明会で、SFC会員数がコロナ前の約1.5倍になったと説明した。さらに2035年には、今の約1.4倍に増える見込みだという(TRAICY)。
これに対して、「コロナ禍にプレミアムポイント2倍キャンペーンで修行を煽ったのは誰だ」「自分で増やしておいて困っているのか」という声が並んだ。
これは正論だ。コロナ禍で乗客が消えたとき、ANAはポイントを2倍にして上級会員を増やし、目先の売上をつないだが、そうして増えた会員を、5年後に「多すぎる」と言ってしまう。筋が通らない。コロナ前からSFCを持っていた会員が、巻き添えを食ったと感じるのも当然である。
2. 「いつからANAはカード会社になったのか」
「航空会社のステータスなら、決済額ではなく搭乗回数や飛行距離で決めるべきだ」という声も多かった。出張の航空券は法人カードで払うので、ANAカードの決済額には載らない、という指摘もあった。
気持ちはわかる。ただ、ここはANAの理屈にも一理ある。SFCはもともと「年会費を払えば上級会員が続く」カード商品だ。毎年の搭乗実績で判定するなら、通常のプレミアムメンバーで足りる。カード商品の価値をカード決済で測るのは、自然な流れである。
問題は基準ではなく、数字の見せ方だった。ANAは説明会で、SFC会員の約4割が年間100万円未満、約3割が50万円未満しか使っていないと明かした。これを読んだ人たちの反応は「3割が50万円未満なのに、なぜいきなり300万円なのか」。現状との差が大きすぎる。会員の耳には「あなたたちはお金を使っていない」と聞こえてしまう。
3. 「JALのように新規だけ厳しくすればよかった」
これは前回も触れた。JALは2024年にJGC(現Life Status Program)を改定したとき、既存会員を据え置き、新規参入者だけ条件を厳しくした。「ANAもそうすればよかった」という声は、今回も多かった。
世代間の公平性で言えば、ANAの一斉適用が筋が通っている。この考えは今も変わらない。
しかし、既存会員の多くは「一度取れば永久に続く」と思って修行した。SFCは実際にそう売られてきた。約束を途中で変えるなら、変える側が丁寧に説明するべきだ。4月の発表には、それがなかった。
4. 「ANAカードを解約する」
「ANAカード解約者続出」「今後はワンワールドをメインにする」。「300万円使うならマリオットに使う」という声もあった。
ここは前回と同じことを言いたい。感情でSFCを解約するのは損だ。 見直し後のLITEには、国内線の優先搭乗も、優先保安検査も、手荷物優先も残っている。混雑時以外はラウンジも使える。年会費に見合うかどうかは、自分の利用実態で計算すればいい。SNSの空気で決めることではない。
見直しは正しかったと思うが、遅すぎたかも
見直しの中身は正しい判断だと思う。
ラウンジの問題は、会員が多すぎることではない。同じ時間に集中することだ。混雑時は入れない、それ以外は入れる、事前予約で入室者数を把握する。4月の「300万円未満は全員締め出し」より、はるかに現実的な解決策だ。200万円に下げない理由も、ラウンジの席数という物理的な制約で説明できている。納得のいく内容である。
一方で、この案は4月の時点で出せたはずだ。混雑予測も事前予約も、ラウンジの運営を考えれば最初に出てくる手段である。ANAはまず「全面禁止」という一番強い案を出した。5か月間会員を不安にさせ、批判を浴び、それから現実的な案に戻した。結果は落ち着くところに落ち着いた。しかし、その過程で失った信頼は戻らない。
SNSに「嘘つき会社」「騙された」という言葉が並んだのは、ラウンジを失うからではない。「一度取れば続く」という前提が、一方的に変えられたからだ。
では、どう動くべきか
前回の選択肢は、今回の見直しで少し書き換える必要がある。
- ANA便中心で、国内線をよく使う人:LITEで十分になった。混雑時はラウンジに入れないかもしれないが、年末年始やお盆は今でもまともに座れない。300万円を無理に使う理由はほとんどない。
- 提携他社便で海外をよく飛ぶ人:スターアライアンス・ゴールドを失う影響は大きい。家計の決済をANAカードに寄せてPLUSを狙うか。ラウンジだけならプライオリティパス付きのカードで補うか。自分の利用実態で計算して決めればいい。
どちらの場合も、期限は迫っている。判定期間は2026年12月16日に始まる。あと2か月半だ。PLUSを狙うなら、それまでに固定費の支払い先をANAカードに移しておきたい。
マイレージ界の掟、ふたたび
前回の記事は「マイレージプログラムの生殺与奪は航空会社が握っている」で締めた。今もそれは変わらない。
ただ、今回わかったこともある。ルールを決めるのは航空会社でも、会員が声を上げれば、ルールは動く。4月の「全面禁止」は、5か月で「混雑時を除き利用可」になった。
私自身の考えも変わらない。SFCの価値は優先搭乗とマイル積算ボーナスにある。見直し後のLITEでも、その二つは残る。そこにラウンジの大半が戻ってきた。ヘビーユーザーの一人として、この見直しは素直に歓迎したい。
ANAには一つだけ注文がある。次に制度を変えるときは、最初からこのくらいの案を出してほしい。ラウンジは増設できても、信頼は増設できないのだから。