PuchiDenを作った理由
Skypeはもうない。本来ならその後、オープンなウェブで国際電話をかけることはもっと簡単になっていてもよかったはずだが、実際にはむしろ難しくなった。PuchiDenはそれに対する私なりの答えだ。インストール不要、アカウント不要、追跡もなし、まるでインターネット上の公衆電話。
最初に正直に言っておく。私はキャリアの大半を電話まわりのプロダクトに費やしてきた人間だが、そんな私ですらSkypeが終了したあとの国際電話のかけ方に苛立ちを覚えた。
Microsoftは2025年5月にSkypeを終了させた。多くの人にとって、これは20年続けてきた習慣の終わりだった。アプリを開き、連絡先をクリックし、別の国にいるお客様と話す。完璧なソフトウェアではなかったが、ちゃんと動いていた。
Skypeに代わって多くの人に勧められたのは、同等のサービスではなかった。「Teamsを入れてください」だ。あるいはWhatsApp、LINE、相手が使っているもの。電話を一本かけたいだけの人にとって、「まずお互い同じアプリにサインアップしてください」という前提条件はばかげている。
だからPuchiDenを作った。
既存の代替サービスで気になったこと
Skypeの代わりはいくつもある。私はそのほとんどを試してきた。一つひとつを単体で見れば、別に悪いものではない。しかし全部をまとめて並べてみると、このカテゴリーが、ふつうのユーザーが本当に求めているものから静かにずれてきていることが見えてくる。
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アプリのインストールを求めてくる。 一度きりの電話でも。二度とかけない番号にかけるためでも。電話一本のためにアプリをインストールする、というのはよく考えると不合理な話だ。公衆電話はインストールするソフトウェアではない。そこに「ある」もので、近寄れば動くものだ。
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アカウント作成を求めてくる。 メールアドレス、パスワード、本人確認のための電話番号。電話をかけるためにだ。さらに別の端末から使おうとすると、IPアドレスが「いつもと違う場所」に見えるからという理由で再認証を求めてくる。
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GoogleやFacebookでのログインを求めてくる。 つまり「電話をかける」という行為が、自分のソーシャルプロフィールや広告グラフ、その他いろいろなものと紐づけられるということだ。
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追跡してくる。 ランディングページにはGoogle Analytics、ダイヤラーにはMeta Pixel、通話が繋がるまでマウスがどこを動いたかを記録するセッションリプレイ。電話をかけるためにこれらは一つも必要ない。それでも、もはや標準装備になっている。
1995年の公衆電話はこれを一つも要求しなかった。受話器を取り、小銭を入れ、番号をダイヤルする。電話はあなたが誰かを知らなかったし、知る必要もなかった。
私はそれを、2026年のインターネットで実現したかった。
名前について
「プチ」(プチ)はフランス語のpetiteから来ている日本語で、小さい、ちょっとした、気軽な、という意味だ。プチパーティー、プチ贅沢、というふうに使う。
「電」(でん)は電話の電であり、ここでは「フォン」と読み替えてほしい。
PuchiDen = 小さな電話、シンプルな電話。3クリックで使えてしまう、考え込まなくてもいい電話。
プロダクトのコンセプトが、そのまま名前に入っている。
作ったもの
PuchiDenはウェブサイトだ。アクセスして、ダイヤルして、話す。それで全部だ。
インストールするアプリはない。作るアカウントもない。覚えるパスワードも、紐づけるGoogleアカウントもない。Google Analyticsも、Meta Pixelも、第三者の広告トラッカーもない。
UIは公衆電話の感覚に寄せている。テンキー、発信ボタン、終話ボタン。電話を使ったことがある人なら、PuchiDenの使い方はもう知っている。これは意図したものだ。
また、キーパッドは小さな埋め込み可能なコンポーネントとしても作ってある。たとえばサービス業を営んでいて、「電話する」ボタンが「またアプリを起動する」のではなく実際にインターネット越しの通話を発信するボタンであってほしい、という需要には応えられるようになる予定だ。これについてはまた別の記事で書く。
なぜ私にこれが作れて、多くの人には作れなかったのか
率直に言うと、PuchiDenがこの形で存在している理由の大半は、私が過去20年間を電話の地味な部分の中で過ごしてきたからだ。
Xoxzoを2007年にSMSからメールへの変換サービスとして始め、SIP、WebRTCへと進めた。インターネットとPSTN(公衆電話網)を14年間つなぎ続け、2021年に売却した。コーデック、NAT越え、キャリアルーティング、ジッターバッファ、東京の地下にある不安定なモバイル回線でもそこそこの音質を保つ方法。こうした「地味なインフラ問題」は、私にとって何度も解いてきた問題だ。
「小さなシンプルな電話」を難しくしているのは、UIの部分ではない。マーケティングサイトでもない。電話が本当につながるかどうか、音がちゃんと聞こえるかどうか、ユーザーがその仕組みを意識しなくて済むかどうか、そこに尽きる。
このバックグラウンドがないと、こういうものを作るのは数年がかりの仕事になる。あれば、あとは趣味と規律の問題になる。要するに「何を入れないか」を決める仕事だ。
あえて入れなかったもの
チャットはない。ビデオもない。「ストーリー」機能もない。連絡先を追加する機能があるものの、「お友達」がリストがない。ユーザーに見せるエンゲージメント指標もない。通話を要約してくれるAIアシスタントもない。通知すべきことが何もないので、通知もない。
PuchiDenは電話をかけるためのものだ。そういうものだ。
コンシューマー向けソフトウェアの大きな流れが、機能を削るのではなく足す方向に向かっていることはよくわかっている。どのアプリも最終的にはフィード、チャット、マーケットプレイスを生やす。PuchiDenはそうしないと決めている。やりたいのは「完成しているもの」、完璧ではないが完成しているものを提供することだ。プロダクトロードマップ上の都合で機能が後付けされ、時間とともに悪化していく、というありがちなパターンに乗らない。
こんな人に向いている
PuchiDenは「たまに国際電話をかけたいだけ」の人のためのものだ。具体的に念頭にあるのは次のような場面だ。
- 海外にいるあいだに、海外にある領事館、ホテルやクリニック、現地の番号にかけたい旅行者。
- 海外の家族に電話をしたい人。相手が特定のアプリではなく、固定電話やふつうの携帯を使っているケース。
- 海外にあるお客様また銀行などに電話する必要がある中小企業またはノマドワーカーの皆様
- 自社サイトに「電話する」ボタンを置きたいが、訪問者にアプリのインストールを強いたくない小規模事業者。
- かつてSkypeでこれをやっていて、いまや行き場を失っている人。
どれかに当てはまるなら、puchiden.appで試してみてほしい。自分の用途に合うかどうかは、30秒もあれば判断できる。
これからについて
この記事はこのサイトの最初の記事だ。これが最後ではない。今後はPuchiDenが裏側でどう動いているか、2026年に通話インフラを運用することがなぜ思ったより難しいのか、プライバシーまわりで何を選びどう設計したか、そしていまも判断に迷っている部分について書いていくつもりだ。そういう話を読みたいなら、著者ページから追ってもらえると一番早い。
読んでくれてありがとう。そしてPuchiDenを試してくれてありがとう。意図的に小さなプロダクトだ。